オーロラの歌



……知ってる。


私、知ってる。


映像の中にある光景も、人物も。


懐かしさを感じるくらい、知ってる。



泣いて笑って、長い長い旅をした。


とても苦しかった。とても辛かった。


それでも、大好きな仲間がいたから頑張れた。



どんどん想いが溢れてきて、胸がキュゥッと締め付けられる。


こみ上げてきた涙を拭って、映写された思い出に手を伸ばした。



『――琉美』



誰かに呼ばれたことで、私の手は宙をかすめた。


誰?


ゆっくりと振り返ると、そこには、



『琉美』



一人の、華奢な女の子がいた。


もう一度私の名前を呼んだ女の子の髪は、綺麗なエメラルドグリーンに彩られていた。



会ったことはない。


けれど、やはり知っている。


彼女の、何もかもを。




『オーロラ……?』




それが当たり前であるかのように声が漏れて、心臓が大きく軋めいた。



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