オーロラの歌






「……オーロラ、待って。待ってよ!!」



ハッとして起き上がれば、そこは現実世界。


辺りを見渡して、自分の部屋だと確認する。


汗でびっしょりの額や息切れが、オーロラと会ったことを証明しているようだった。



すると、いきなり部屋の扉が勢いよく開いて。



「大丈夫か!?琉美」



慌ただしく、妹を溺愛しているお兄ちゃんが部屋に入ってきた。


私の大声を聞いて、飛んで来たのだろう。



「大丈夫だから、出てって!」


「本当か?悪夢でも見たんじゃないか?それか熱とか……」


「大丈夫だってば!」



枕を扉の方に投げて、心配性なお兄ちゃんを無理やり部屋から追い出した。


一気に目が冴えて、夢から覚める。



そうだ。私は小倉琉美で、オーロラじゃない。


何度も何度も言い聞かせても、微弱な違和感は離れてはくれなかった。



「はぁ~」



混乱して、ため息を吐く。


オーロラとしての記憶が、小倉琉美としての記憶と複雑に絡まってしまっているのかもしれない。



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