オーロラの歌



やけに生々しくて、リアリティのある記憶。


身体全体に、あっちの世界でオーロラが旅をした経験が染み付いている。


辛さも、悲しみも、苦しさも、痛みも。


死んだ瞬間のことさえも、鮮明に。


壮大でファンタジックだけど、どれも紛れもない真実で。


オーロラは、私自身とは比べ物にならない過酷な人生を歩んできたのだと、痛感させられた。



「運命、か」



イービルは転生魔法を使うくらい、自分が死んでもいいと思うくらい、オーロラに追い込まれていたんだ。



オーロラの記憶が私に流れているだけじゃなく、オーロラの能力も私が持っている。


ひどく狂わせられた運命が、私の肩にのしかかっているんだ。



「いやしの歌は、寿命を削る能力……」



ツ、と指先で喉に触れてみる。


歌えば、命が滅ぼされていく。


間近に迫る死が、私に恐怖心を与えた。



「……怖い」



ボソッと呟いて、自分を抱きしめた。


イービルも、私のように転生しているはずだ。


イービルの現世は、誰なんだろう。



オーロラとイービルの因縁の深さは、運命を動かし、必然や思わぬ事故を生じさせるほどだ。


まさかとは思うが、この広い世の中で、私のすぐ近くにいる人物の正体がイービルだという可能性が、ないとは言い切れない。



十分注意して過ごさないと。


殺されないために。


オーロラの願いを、叶えるために。



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