オーロラの歌
暗い私を気にかける、うざったいお兄ちゃんを無視して、私は学校へ行った。
俯きながら歩いていると、視界に桜の花びらが入る。
桜の花言葉は確か、「精神の美」「優美な女性」だった気がする。
まるで、お母さん……じゃなくて、アンジェラスのことを言っているみたいだ。
「あっちの世界には、桜はなかったな」
小さな花びらを捕まえようとしたら、軽やかに逃げられた。
転生魔法で前世がわかったら、昨日と同じ景色が別物に見える。
私は日本にいるのに、気づけばルシフェル王国と比べていて。
私の魂が、熱くなる。
『遠くても、伸ばした手にかすりもしなくても、そこに空があることこそに意味があるんだよ』
ふと、オーロラがグリンに言った言葉を、思い出した。
空だけは、同じだ。
あっちの世界も、こっちの世界も。
この空の下のどこかで、今もラジ達は生きているのかな。
そう思ったら、決して繋がらない平行世界だとしても、安心できた。