オーロラの歌
私は数秒遅れて、悪霊を追いかける。
廊下にいた生徒は、悪霊が見えていない様子だった。
もうすぐ授業始まっちゃうってわかってて、悪霊は逃げてるの!?
だとしたら、すっごく嫌な悪霊だ。
悪霊は時々振り返って、疲れている私を嘲笑う。
かっちーん。
本気で怒った私は、スピードを上げて悪霊との距離を詰める。
そんな私に対して、悪霊はまだ余裕そうに、筆箱を持ったままのんびりと適当に動き回っている。
どれくらい走っただろうか。
つい先ほど授業が始まるチャイムが、響いてしまった。
私の体力は、底をついていた。
「いい加減、筆箱返してよ」
肩で息をしながら、覇気のない言い方で悪霊に言い放つ。
だがやはり、悪霊は筆箱を返そうとはせず、ゆらゆらと宙を泳ぐ。
気づいたら、裏庭までやってきていた。
授業中だからか、辺りは静かで。
太陽だけが元気よく主張している。