オーロラの歌



恐怖と戸惑いが、足をすくませる。


悪霊が目と鼻の先まで迫ってきている。


いやしの歌で、悪霊を消すしか方法はない。


口を大きく開けて、空気を吸い込んだ直後。




「――ホーリー・ラジェーション」




聞き覚えのある呪文が、聞こえてきた。


私を襲おうとした悪霊が、近くから飛んできた光線と衝突し、弾け散る。



『改めて、自己紹介するよ』



私は、その魔法を覚えている。



『魔法使いで、得意な魔法は光の魔法』



前世のように、助けてくれた。


殺されかけた私を、同じ魔法で。


じわり、と涙が溢れた。



まだ震えている足で無理やり立ち上がって、声のした出入り口の方へと振り向いた。


大粒の涙が、頬を伝った。



「ラジ……っ」



校舎と裏庭を繋ぐ出入り口の扉に寄りかかっていたのは、よく知っている人物だった。



< 567 / 888 >

この作品をシェア

pagetop