オーロラの歌



授業に集中しなくちゃいけないのに、早鐘を打つ鼓動によって、文字を書こうとした手を止められた。



『苦しんでる人を、さらに苦しめるわけにはいかないよ』



エストレア・シティで、オーロラがラジに言った言葉が、私を痛々しく責める。


私は知らないうちに、椎本くんを追い込んでしまったのだろうか。


椎本くんはラジのように、何かに苦しんでいるのだろうか。


急に息がしづらくなって、拙い呼吸を繰り返した。



オーロラは、何度もラジに感謝して、謝っていた気がする。


それくらい助けられて、迷惑をかけたんだ。


私も、オーロラと同じだ。


昨日、椎本くんが悪霊から助けてくれて。


今朝も、「ラジ」と呼んで迷惑をかけてしまった。


私はオーロラとはあまり似てないと思っていたけど、私とオーロラも、椎本くんとラジも、結局は似た者同士なのかもしれないな。



一瞬思い出すと、気が緩んで、記憶の洪水に飲まれる。




『俺が、オーロラを守るよ』


『また会えて、本当によかった』


『それを言うなら、お前の髪の方が綺麗だよ』


『助けに来たぞ!』


『オーロラ、大丈夫か!?』


『俺、さっきの……“あいのうた”好きだな』


『オーロラ、死ぬなよ。俺はまだ、お前のそばにいたい』




一生忘れたくない思い出は、私の大事な宝物。


好きな人との時間なら、尚更のこと。



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