オーロラの歌



バレー部の人が、わざわざ保健室まで来て手当てするのは珍しいな。


いつもなら、マネージャーが応急処置するのに。



「やっぱり変ですよね。保健室に来るのって」



図星を突かれて、一瞬動きを止める。


考えていたことが、顔に出てたのかな?



「突き指したのはあたしの責任ですけど、保健室に行くように指示したのは先輩なんです」


「先輩って、いじめられてるっていう、あの先輩?」



念のため聞いてみたら、唯夏ちゃんは清々しいほどはっきりと肯定した。


運動部は上下関係が厳しいって、佳那もボヤいてたっけ。


唯夏ちゃんに同情しちゃうな。



「あたしを邪魔に思ってるなら、直接そう言えばいいのに」



唯夏ちゃんが刺々しく呟いた声を私の耳が拾って、大変だなあ、とため息をこぼした。


いじめに負けずに部活を頑張っている唯夏ちゃんは、すごい。


私なら、とっとと部活辞めちゃうもん。


唯夏ちゃんの屈することのない精神を間近に感じて、自然と応援したくなった。



「はい、これでいいかな」


「わあ、ありがとうございます。完璧ですよ」


「お世辞ありがと」



手当てが終わって、褒め上手な唯夏ちゃんに笑顔を向ける。



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