オーロラの歌
唯夏ちゃんは椅子から腰を上げて、保健室の扉を開けた。
「利一、琉美先輩の足を引っ張っちゃダメだよ?」
「わ、わかってるよっ」
「琉美先輩、手当てしてくださってありがとうございました」
「どういたしまして。部活頑張ってね」
「はい!」
お辞儀をしてから保健室を出て行った唯夏ちゃんの背中は、心なしかたくましく見えた。
扉が、音もなく閉ざされる。
「唯夏ちゃんって、強いんだね」
「僕も見習いたいです」
強さとは、一体何なのだろう。
どうやったら、手に入れられるのだろう。
どうしたら、強くなったと言えるのだろう。
何もわからないけれど、強くなりたいという気持ちがあれば、いつか成長できる。
そう、信じてる。
唯夏ちゃんが去ってすぐ、また扉が開いて、保健室にサエちゃんが入ってきた。
「あら、保健委員の仕事?」
「はい」
「お疲れ様」
サエちゃんの美しすぎる笑みに、心が和む。