オーロラの歌
私の横を通ったサエちゃんから、いい香りが漂った。
「これ、ここに置いておくわね」
サエちゃんは机にポスターを二枚置いた。
「それじゃあ、失礼しました」
「バイバイ、サエちゃん」
「また明日ね、小倉さん」
私が手を振ると、サエちゃんは手を振り返してくれた。
忙しそうに出て行ったサエちゃんがいなくなった保健室には、サエちゃんの匂いが残っていた。
「綺麗な人ですね……」
「でしょう?」
ずっと黙っていた利一くんが、口を開く。
私はなぜか得意げに口角を上げた。
利一くんはそんな私を横目に、フッと笑みを漏らした。
心地よい雰囲気が空間を纏った瞬間、
「――ウィケッド・ナイトメア」
部活動に励む声に混じって、イービルの魔法を唱える呪文が、誰の声なのか判断できないくらいうっすらと聞こえてきた。