オーロラの歌
扉の隙間から、邪悪なエネルギーの塊が私に襲いかかってきた。
突然のことに頭がついていかなくて、足が動かない。
逃げなきゃ。
そう判断した時には、既に遅く。
大量の悪のエネルギーは、私を取り囲もうとしている寸前だった。
「琉美先輩、危ない!!」
利一くんが私の体をドンッ、と押した。
床に倒れ込んで、息を呑む。
恐怖を上回るほどの心苦しさが、感情を支配した。
利一くんには、悪のエネルギーが見えていたの?
だから、助けてくれたの?
……いや、今はそんなことをのんきに考察している場合じゃない。
振り返ると、真っ黒い霧のようなものが利一くんに覆いかぶさっていた。
「利一くん!」
「琉美せ、んぱ……っ」
利一くんに伸ばした手は、空を引き裂いて。
悪のエネルギーが、黒い殻へと変形して。
その殻の中に、利一くんが閉じ込められてしまった。