オーロラの歌
日本生まれの日本育ちの、穏やかで落ち着きのある、ロシア人のパパ。
元人気モデルで、時に厳しく時に優しい、日本人のママ。
そんな二人の間に生まれた僕は、両親に愛されながら成長していった。
だから、疑いもしなかったんだ。
この世に、残酷な落とし穴があるなんて。
『ねぇ、パパ。ママ』
不安しかなかった。
背中合わせにある、幸せと不幸せが、僕を苦しめる。
『僕のことを嫌いにならないで』
僕が大粒の涙をこぼしながら言うと、両親はさらに強く僕を抱きしめた。
幼稚園には一人も味方はいなくて。
家族のそばだけが、安全で大切な唯一の居場所だった。
『利一、お前は気持ち悪くないよ。それに、俺達がお前を嫌いになるわけないだろう?』
パパが、僕の髪を静かに撫でる。
『利一は、世界一可愛い、私達の息子よ』
ママが瞳を潤ませて、僕に愛情を注ぐ。