オーロラの歌





そんなある日のことだった。


転校生がやってきたのだ。



『初めまして、雛森唯夏です』



第一印象は、あまりよくなかった。


いじめっ子に似て、勝気そうだった唯夏ちゃんに、僕は苦手意識を持っていた。


どうせ、僕なんかとは関わり合いのない子なんだろうな。



毎日毎日、いじめられることに怯えていた僕には、友達と呼べる人はいなかった。


友達になりたくても、友達だった人もそうでない人も皆、僕から離れていく。


自分がいじめの標的になりたくないから。


僕にもその気持ちはわかるし、いじめの辛さは身をもって経験した。


だからだろうか。


自ら誰かに話しかけようとも、近づこうとも思わなくなったのは。



その日も、いじめっ子達は先生の目を盗んでは、僕を差別して、嫌がらせをした。


精神的にも、肉体的にも、暴力を振るわれた。


小心者な僕は、逃げるか避ける、その二つの選択肢しか浮かばず、いじめっ子達と闘おうとすらしなかった。


強くなりたい。


けど、僕には……。


常に後ろ向きな考えが、思考を巡らせていた。



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