オーロラの歌




『何してんの?』



いじめっ子が僕を殴ろうとした瞬間、横から唯夏ちゃんが話しかけてきた。


突然のことに、僕もいじめっ子もびっくりして、動きを止める。


それもそうだろう。


今まで、僕がいじめられている状況に割り込んできたのは、先生だけだったのだから。



『何って、俺らがこいつを成敗してんだよ』


『せいばい?なにそれ』


『成敗っていうのはな、悪い奴をこらしめることを言うんだ』



ドヤ顔で知識を披露したいじめっ子に、いじめっ子の友達がいじめっ子を『すごい』『物知りだな』と褒めちぎる。


いじめっ子の友達とは対照的に、唯夏ちゃんは顔色一つ変えずに、目をつり上げた。



『あたしには、その子が悪い奴には見えないけど?』


『こいつは見た目が気持ち悪いから、成敗してんだよっ』



首を傾げた唯夏ちゃんに、いじめっ子は異様に「成敗」という言葉にこだわりながら、僕を貶す。



『それより、お前……雛森だっけ?俺の仲間にしてやってもいいぜ?』



いじめっ子は、男勝りな唯夏ちゃんを気に入ったのか、偉そうに笑みを浮かべた。


また、僕をいじめる人が増えちゃうの?


僕は怖くなって、生唾を飲み込んだ。



< 602 / 888 >

この作品をシェア

pagetop