オーロラの歌
『何してんの?』
いじめっ子が僕を殴ろうとした瞬間、横から唯夏ちゃんが話しかけてきた。
突然のことに、僕もいじめっ子もびっくりして、動きを止める。
それもそうだろう。
今まで、僕がいじめられている状況に割り込んできたのは、先生だけだったのだから。
『何って、俺らがこいつを成敗してんだよ』
『せいばい?なにそれ』
『成敗っていうのはな、悪い奴をこらしめることを言うんだ』
ドヤ顔で知識を披露したいじめっ子に、いじめっ子の友達がいじめっ子を『すごい』『物知りだな』と褒めちぎる。
いじめっ子の友達とは対照的に、唯夏ちゃんは顔色一つ変えずに、目をつり上げた。
『あたしには、その子が悪い奴には見えないけど?』
『こいつは見た目が気持ち悪いから、成敗してんだよっ』
首を傾げた唯夏ちゃんに、いじめっ子は異様に「成敗」という言葉にこだわりながら、僕を貶す。
『それより、お前……雛森だっけ?俺の仲間にしてやってもいいぜ?』
いじめっ子は、男勝りな唯夏ちゃんを気に入ったのか、偉そうに笑みを浮かべた。
また、僕をいじめる人が増えちゃうの?
僕は怖くなって、生唾を飲み込んだ。