オーロラの歌



……す、すごい。


僕は思わず、唯夏ちゃんのかっこよさに見入ってしまった。



『こらっ、何やってるのー!?』



すると、先生が騒ぎを聞いて、駆けつけてきた。


いじめっ子も唯夏ちゃんも、動揺を隠せない。



『やばい、怒られちゃう。逃げるよ』


『で、でも……』


『いいから、早く!』



唯夏ちゃんに手を引っ張られ、僕と唯夏ちゃんは園内の端っこにある花壇の奥に逃げ込んだ。


身を潜めて、先生に見つからないようにする。



『ねぇ、名前教えてよ』



唯夏ちゃんは僕から手を放すと、そう尋ねた。



『く、久賀利一……』


『元気ないなぁ。もっとハキハキしなよ』


『ご、ごめん』


『すぐ謝るところも、直した方がいいよ』



唯夏ちゃんの直球さに、僕の表情は陰っていく。


初対面の相手にも、自分が正しいと思った意見を言える唯夏ちゃんが、羨ましかった。



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