オーロラの歌





下校時間になり、利一くんと生徒玄関で別れて、学校を出た。


夕焼けが、悲しげに私を見送る。



「……ゴホッゴホッ」



急に咳が出て、校門を曲がったところで足を止めた。


どうして、咳なんて……。


風邪引いちゃったのかな?


それとも、いやしの歌のせい?


そんなわけ、ないよね。


だって、能力を発動させたのは今日が初めてだもん。


オーロラは五歳の時から幾度となく歌を歌っていたけど、私は違う。


だから、この咳はいやしの歌とは関係ない。


そうだよね?



本当は、わかっていた。


いきなり咳き込んだ、その原因が自分にあることに。


それでも、気づかぬ振りをした。


どうしても、認めたくなかった。



< 620 / 888 >

この作品をシェア

pagetop