オーロラの歌
違和感のある喉元を、抑えた。
すぐに咳が止まって、ホッと息を漏らす。
「おい、何してんだ」
聞き覚えのある声に、鼓動が跳ねた。
「邪魔だ、どけ」
「せ、せっちゃん!」
私が振り向いたと同時に、せっちゃんは私の横を通り過ぎた。
そういえば、せっちゃんって弓道部だったんだっけ。
だから、帰る時間が私と同じで遅いんだ。
「せっちゃん、一緒に帰ってもいい?」
「……あぁ」
許可が出たので、メガネをクイッと指先で持ち上げたせっちゃんと並んで歩く。
今日のせっちゃん、どうしたんだろう。
いつもなら一緒に帰りたくなさそうに、毒舌のひとつやふたつ吐くのに。
せっちゃんらしくないな。
もしかして、私が咳してたの見てたのかな。
それで、気遣ってくれてるの?