オーロラの歌



椎本くんにとって、人助けは当たり前のことなのかな。


普段の椎本くんは、他人なんて興味ないぜ、と言い出しそうなオーラを醸し出していて。


お世辞にも、人助けを好んでやるような好青年には見えない。



そういえば、椎本くんが挨拶をした時と同じように、誰かの手伝いをしているところも、初めて見た気がする。


私のことをよく助けてくれるのは、ただの偶然?


それとも、やっぱり椎本くんも心のどこかでは、前世のことを関係なくないと思っているから?



「本当に、椎本くんと付き合ってないの?」



黒板消しを綺麗にしていた私に、佳那が気配を潜めて近寄ってきた。


びっっっくりした。


いつの間に、私の近くに来てたの!?


……ていうか、またその質問?



「付き合ってないってば」


「でもさ、椎本くんが構うのって、琉美に対してだけじゃん?誰だって、二人は恋人なんじゃないかって思うよ」



それは、私の前世がオーロラだからだよ。


なんて、言えるはずもなく。



「本当の本当の本当に、付き合ってないわけ?」


「本当の本当の本当の本当に、付き合ってません!」



佳那のくどい質問に、呆れてしまう。



「ふーん。じゃあ、椎本くんの片思いなのかな?」


「なんでそうなるの」


「え。てことは、琉美の片思い?」


「どっちもちっがーう!」




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