オーロラの歌



きっと、シエルは実体化できなくても、イービルがいやしの歌の秘密を喋ってしまったあの時も、あの部屋にいたんだろう。


確信に近い憶測が正しかったら。


能力の秘密を知っている、シエルの記憶を授けられた江藤先輩は、寿命を削る能力は使うな、と言いそうなのに。



「そりゃ、使ってほしくないけどさ、いやしの歌でしかこの子を救えないのなら仕方ないだろ?」



江藤先輩って、優しいんだな。


シエルにそっくりだ。



「そっか。ありがとう。……あ、えっと、ありがとうございます」



私、普通に先輩相手にタメ口で話しちゃってたよ。


すぐに訂正した私に、江藤先輩はクッと喉を鳴らした。



「いいよ、タメ口で」


「え、でも、」


「そっちの方が、俺も嬉しいし」


「……うん、わかった。ありがとう」



そして、私は再びいやしの歌を発動し、歌を紡いだ。


“あいのうた”は、佳那の心に伝わって。


佳那にとりついていた、荒んだ悪霊は儚く消え失せた。



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