オーロラの歌



少女が、こちらに向かって『シエル』と幸せそうに呼ぶ。


知らないはずなのに、知っている気がするのはなぜだろう。


俺の名前ではないのに、泣きたくなるのはなぜだろう。



次第に、映像が誰かの記憶だとわかると。


その記憶は、自分のものだと気づいてしまった。



……気がするんじゃない。


オーロラという名の少女も、とめどない愛も、主従でありながら仲間でもある関係も。


俺は、知っている。


いや、正しくは、“教えられた”んだ。


イービルの、転生魔法によって。



そうだ、俺はシエルだ。


オーロラを守ってきた。


一緒に旅をしてきた。


愛していた。


そんな、俺の前世。



映像が、シエルとしての記憶が、オーロラの最期の瞬間に切り替わった。



待って、待ってくれ。


もう、歌わないでいい。


オーロラ、死ぬなよ。


俺をおいて、逝かないで。


生きてくれよ、オーロラ。



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