オーロラの歌




『――ウィケッド・ナイトメア』



聞いたことのある呪文で、意識が戻った。


体調はまだだるいが、大丈夫だろう。


気づけば放課後になっていて、辺りはオレンジ色に色づいている。



さっきのって、イービルの魔法?


幻聴かなんかだよな?


こんな広い世の中で、イービルと同じ学校なわけが……。


ベットを囲うカーテンを少し開けて、保健室内の様子をこっそりと見てみた。



カーテンの向こう側では、見覚えのある黒くて大きい殻に、とある男子が閉じ込められようとしていた。


あれは、あっちの世界でオーロラを監禁したものと同じものだ。



『あいつ、今……』



弱々しい男子に違和感を感じていたら、あっという間に男子が殻の中に幽閉されてしまった。


やっぱり、幻聴なんかじゃなかったのか?



視線を横にずらすと、涙ぐんだ琉美ちゃんが殻の近くで倒れ込んでいた。


どうして、こんなところに琉美ちゃんが……!?



俺は驚きで、動けずにいた。


すると、琉美ちゃんがゆっくりと立ち上がった。


何をする気だ?


あの魔法は、光のエネルギーを当て続けない限り、壊せない。


……あれ?


そもそもどうして、イービルは悪夢を見せる魔法を使ったんだ?



――答えは、ひとつ。



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