オーロラの歌






時は風のように過ぎていき、五月下旬。


ある日、昼休みになってすぐ、噂を信じてつきまとう女子から逃げるために、穴場である屋上の給水塔の上に避難した。


昼食も食べずに、寝転がる。


風が気持ちよくて、思わず寝入ってしまった。



『オーロラ』


『……か、』



浅い眠りから起きたら、琉美ちゃんの声がうっすらと耳に届いた。



『や、め……っ』



給水塔の下では、琉美ちゃんが、悪霊にとりつかれた女子に、首を絞められていた。


ドッ、と激しい怒りが沸き上がる。


オーロラに、琉美ちゃんに、手を出すな。



『ウッド・ラピス』



躊躇なく魔法を使い、琉美ちゃんを殺そうとしていた女子を木々で捕らえ、拘束した。


琉美ちゃんの目の前まで近寄った俺に、



『……江藤、せ、んぱい』



と、震えた声で言った琉美ちゃんの目は、潤んでいた。



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