オーロラの歌



嘘をつかずに真剣に話したのに、サエちゃんにデコピンをされてしまった。


おでこがジンジンと赤くなって、痛い。



「あなたはまだ高校生なんだから、現実の辛さなんて気にしちゃダメよ」


「サエちゃん……」


「現実を見るのは、大人になってから。子どものうちは、めいいっぱい“今”を楽しみなさい」



私だって、そうしたかった。


こんな現実、知りたくなかったよ。


……でもね。


これは私の使命であり、宿命なの。


私の辛さは、オーロラに比べたら軽いもので。


辛さを感じてしまったから、何気ない時間が幸せに思える。


そう考えたら、ちょっとは楽になれるんだ。



「わかった?」


「はーい」



私の間延びした返事に、サエちゃんは呆れたように口元を緩めた。



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