オーロラの歌
寂しいとか、悲しいとか。
そんな気持ちは、とうに忘れた。
食事をするのが一人でも、料理の味は変わらない。
それは、これが俺にとって、当たり前の日常だからだ。
最低限の生活をするためだけの、温度のない空間。
他とは違う、家族の形。
笑顔や幸せがどこかへと消えた、家という名の闇。
けれど、不思議と居心地は悪くはない。
きっと、俺がこの不透明な雰囲気と一体化し始めているせいだろう。
夕飯を食べ終えて、食器を洗う。
時計の針が動く音と、心音が、自然と揃っていった。
脳裏をちらつく、小倉の泣きそうな表情。
漏れかけたため息を、飲み込む。
瞬きをする度、瞼の裏に幼い自分の残像がうごめく。
流れに身を任せるように、そっと目を閉じて、昔のことを思い返した。