オーロラの歌





俺が変わってしまったきっかけは、両親の離婚だった。




小学二年生の頃。


仕事人間の父さんに愛されているか不安になった母さんが、軽率に浮気をしてしまったのが原因で、両親は別居。


父さんとの二人暮らしが始まってから、数ヵ月後。


寒波が到来し、人生で一番寒々しかった日。


母さんが、久し振りに家に訪れた。



『離婚、しましょう』



母さんは玄関に立ちすくんだまま、たった一言、そう言い放った。


差し出された離婚届に、父さんは淡々とサインした。


俺は、そんな二人を少し離れた場所から、他人事のように眺めていた。



……あっけないな。



両親は、仲睦まじかったわけではない。


だけど、心の中でお互いに想い合っていた。


それを知っているからこそ、辛かった。



両親はただ、自分の愛が一方的なものになったのだと思い込んでいるんだ。


教えてあげたいのに、二人して諦めたような顔をしていて。


そうか、言っても意味がないんだ。


もう、別れを決めてしまったんだ。


子どもながらに、そう察した。



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