オーロラの歌



なに言ってんだよ。



『俺達のために、頑張れよ』



頭、おかしいんじゃねぇのか?


なんで、俺だけで作らなくちゃいけねぇんだよ。


俺が言い返そうとしても、友達は聞く耳を持たず、俺に全てを任せた。



結局、本当に俺一人で友達の分も料理を作った。


料理の隠し味は、愛情ではなく怒りだ。


友達は嬉しそうに食べ始め、『うまっ』『怜司、天才かよ』と絶賛しながら、箸をすすめた。


俺は、さっきみたいにニヤけそうにはならなかった。



『このグループは、椎本くんだけが料理してたって本当なの!?』



全員が完食した時、家庭科の先生が他のグループの人から聞いた話を、俺達に投げかけた。


答えは、イエス。真実だ。


先生の前なら正直になって、俺に謝ってくれるだろう。


そう思っていたが、俺はどうやら現実を甘く見すぎていたらしい。



『そ、そうです』



友達の一人が頷いてくれて、ホッとしたのは一瞬だけ。



『怜司がやってくれるって言ったんです』


『だから俺達は洗い物してて』


『そうだよな?怜司』



俺の横にいた友達が、焦りながら俺に肯定を求めてきて、目を見開いた。



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