オーロラの歌






昼休みになって、椎本くんへのクッキーをカバンから取り出していたら、椎本くんは昼食も食べずに教室を出て行った。


どこ行くんだろう。



「佳那、ごめん。先に食べてて」


「何か用事?」


「うん、クッキー渡してくる」



佳那にそう告げてから、椎本くんを追いかけた。


椎本くんが向かった先は、三年生の教室が並んでいる四階だった。


三年生の誰かに用でもあるのかな?


用事を邪魔してはいけないと気を遣って、物陰に身を潜めて、椎本くんを見据えた。


椎本くんは奥の方から順に教室を回って、いろんな人に何かを尋ねている様子だった。



そういえば、椎本くんは昨日も一年生の教室をうろついていた。


そんなに一生懸命になって、何が知りたいんだろう。


質問内容が気になって、私は椎本くんにバレないように、静かに椎本くんに近づいた。



「あの、すみません」


「どうしたの?」



椎本くんは、とある教室の扉の脇にいた江藤先輩に話しかけた。



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