オーロラの歌





椎本くんが足を止めたのは、私が椎本くんを「ラジ」と呼んだ時にも入った、空き教室だった。


薄暗い空き教室は、ほこりっぽかった。


椎本くんは私から手を放して、目をつり上げた。



「おっまえな……」


「?」


「どうして、あんな大声で『イービル』とか言うんだよ!騒ぎになったらどうすんだよ!それに、お前の大声を聞いてイービルがやって来たら、俺達が油断してるところを狙われてたかもしれねぇんだぞ!?」



一息でお説教をした椎本くんは、肩を上下させた。


私を心配して、ここに連れてきてくれたの?



「ご、ごめんなさい」



確かに、椎本くんの言う通りだ。


私のせいで、イービルとの闘いが始まり、無関係な人を巻き込む大事故を起こしていた可能性だってある。


警戒心と注意が、足りていなかった。



「……わかればいいんだよ」



素直に謝った私に、椎本くんは唇を尖らせた。



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