オーロラの歌
「てか、お前さ、なんであそこにいたんだよ?」
「椎本くんにクッキーを渡したくて」
「クッキー?」
椎本くんは意味がわからなそうに、眉を寄せた。
隠し持っていたクッキーを、差し出す。
「別に、いらねぇよ」
「助けてくれたお礼がしたくて、作ったの」
迷惑がられても、感謝の気持ちまで拒まれたくない。
意地っ張りだって、わがままだって、わかってる。
それでも、もらってほしいの。
手を引っ込めない私の頭上に、椎本くんのわざとらしいため息が吐き出される。
「いい加減、俺のことなんか放っておけよ!」
椎本くんの瞳が、苦しさに耐えるように揺らめく。
ねぇ、気づいてる?
椎本くん、声が震えてるよ。
「放っておけるわけないじゃん」
あぁ、私の声も震えてる。