オーロラの歌
「スペクトル・プリズムは、光と霧の応用魔法。お前が狙ってたのは、俺の虚像だ」
怜司くんは敵に、上から目線に説明した。
なるほど、そういうことか。
光で自分の虚像を創り、霧で本物の姿や気配をできるだけ薄めて、敵を翻弄させたんだ。
高度な技術を必要とする、こんな魔法も使えたんだ……。
敵はロープを自分の元に戻してから、空き教室全体をかき乱すようにロープを様々な方向に暴れさせた。
ロープがどこから来るのか判断できなくて、弄ばれている気分になる。
天井や壁や床に当たったロープは、軌道を変えて、四方八方から私と怜司くんを傷つけた。
時々肌をロープに弾かれ、痛みを募らせる。
こうなったら、ロープを掴んで、攻撃を止めさせるしかない。
衝撃をこらえながら、ロープの法則のない動きを、目と感覚で必死にたどっていく。
空気の流れ、敵の策、味方の位置、徐々に速くなっていくロープの強度。
脳内に現在の情報をできるだけかき集めて、神経を尖らせる。
私は、ロープがこちらにやってきたのを見計らって、手を伸ばした。
手のひらに確かに感じる、ロープの感触。
緊張感が一気に和らいで、息を長く吐き捨てた。