オーロラの歌
悔しさでいっぱいになる。
「お前が無事でよかった」
なぜか、怜司くんのホッとした顔だけが見えた。
脳裏を過ぎる、ラジの声。
『よかった、無事で……』
怜司くんの、ラジと同じ温度の優しさに、涙腺が緩んだ。
ふと、ロープがゆっくりと動く気配を察知した。
「怜司くん、避けて!」
「え……?」
私は咄嗟に荒々しい声を上げた。
が、私を心配していたせいで、怜司くんの反応が遅れてしまった。
私の横を素早く通り過ぎたロープが、怜司くんの体に巻き付いた。
両腕もロープに縛られている怜司くんは、抵抗しようとしてもできず、奥歯を噛んだ。
ロープが、小さくうねり始める。
頭が珍しく冴えている私は、敵の思考が手に取るようにわかった。