オーロラの歌
敵は、今度は扉の方ではなく、窓の方に怜司くんを運んで。
窓付近に押しのけた怜司くんを、窓の外に投げて殺そうとしているんだ。
そうはさせない……!
私は立ち上がって、敵の思惑をぶち壊そうと、ロープを両手でギリッときつく握り締めた。
波を打っていたロープの勢いを、私一人の力で削【ソ】ぐ。
「琉美、何してるんだ!俺が捕まってる間に、さっさと逃げろ!」
「怜司くんをおいて、逃げれないよ!!」
怜司くんが危ないこの状況で、私だけ安全な場所に逃げるなんて、できない。
私だって、助けられてばっかりじゃない。
怜司くんを、助けてみせる。
「お前に何ができるんだよ!」
怜司くんがわざと冷たく指摘し、私は生唾を飲んだ。
怜司くんの言う通り、私にはいやしの歌の能力しかない。
でも、諸刃の剣を使わずに、“私自身”が仲間を守りたいんだ。
「なんにもできないけど、黙って見てるのも逃げるのも嫌なの」
足でまといだとしても、仲間としてこの場に残りたい。
弱くてちっぽけな力でも支えられるって、証明したい。