オーロラの歌
私は片手でロープを抑えつつ、指示に従って、怜司くんが着ていた薄手のカーディガンのポケットからカッターを取り出した。
「どうして、持ってるの?」
「護身用に持ってたんだ」
怜司くんは魔法を使えるのに、カッターまで持ってたんだ。
それに比べて、私は丸腰で。
守られてばかりなのも当然だ。
これからは私も、護身用に何か持つことにしよう。
「ちぎろうとするより、カッターで切った方が簡単だろ?」
「それならそうと、早く言ってくれればよかったのに」
「刃物はできるだけ使いたくなかったんだ」
私がロープをカッターで切りながら、怜司くんの陰った声を聞く。
怜司くんって、本当にいい人だね。
ロープを切り落とすと、敵はロープを回収して、走り去っていった。
即座に扉を開けて、敵を追いかけようとしたが、もうどこにもいなかった。
おそらく、イービルにテレパスをしたら撤退命令を下され、テレポーテーションをして移動したのだろう。