オーロラの歌
水面の影
放課後、利一くんにクッキーを届けに行こうと、利一くんのクラスに向かった。
利一くんのクラスの教室の前では、利一くんと唯夏ちゃんが喋っていた。
「あ、琉美先輩」
利一くんが私に気づき、声をかけてくれた。
「こんにちは、琉美先輩」
「二人とも、何してたの?」
「利一に調理実習で作ったマフィンをあげたんです」
挨拶をした唯夏ちゃんが、私の質問に答えた。
利一くんの手には、上手に焼けたマフィンの入ったラッピング袋があって。
タイミング悪かったかも、と背中に隠してるクッキーを持つ手が力む。
「琉美先輩こそ、こんなところに何か用ですか?」
「あー、えっと……」
唯夏ちゃんに質問を返され、苦笑した。
「前に利一くんに助けられたから、そのお礼にと思って、クッキーを渡したくて」
「僕に、ですか?」
「うん。もらってくれるかな?」