オーロラの歌
私が滅多にお願いなんてしないから、喜んでるのはわかるけど、ぶっちゃけキモいよお兄ちゃん。
悪口を押し殺して、口を開く。
「お兄ちゃんの竹刀を貸してくれない?」
「いいけど、何に使うんだ?琉美も剣道部に入ったのか?」
「護身用に持っていたくて」
正直に話すと、上機嫌だったお兄ちゃんの雰囲気が陰っていく。
どうしたんだろう、お兄ちゃん。
「ご、ごご、ご、護身用!?」
私は、異様に「ご」が多いことにはつっこまず、コクンと頷く。
すると、お兄ちゃんはムンクの叫びに似た顔をした。
「か、母さん!る、琉美が、す、ストーカーされてるかもしれない!」
「されてないされてない。落ち着いて、お兄ちゃん」
ちょっと、お兄ちゃん。
お母さんに嘘を教えないでよ。
それに、私を狙ってるのは、ストーカーよりタチの悪い人だから。
「大丈夫、俺が琉美を守ってやる」
「いや、自分で自分を守りたいから、竹刀を貸してほしいんだけど……」