オーロラの歌
するとお兄ちゃんは、私を上から下までじっと見た。
お兄ちゃんの瞳が、潤んでいく。
「琉美、怪我してるじゃないか!しかも、そこら中に!!」
一番バレてはいけない人に、バレてしまった。
できれば、隠し通したかった……。
「も、もしかして、い、いい、いいい、いじめられてるのか?」
お兄ちゃんは、私の両肩に手を置いた。
「だから、護身用で竹刀を……!?」
取り乱しすぎなお兄ちゃんを安心させたくて、即座に否定した。
安堵の息を漏らすお兄ちゃんに、もう一度頼む。
「お願いします。竹刀を貸してください」
「……理由は、言ってくれないのか?」
お兄ちゃんが悲しげに眉尻を下げた。
心臓がズキン、と鈍い音を立てる。
お兄ちゃん、隠し事をしてごめんね。
殺されかけているとは、死んでも言えない。
相談もできない。
それでも。
「私のことを、信じて?」
私は、生きていく覚悟を決めた。
だから、そのためにも、武器となる竹刀を貸してほしい。