オーロラの歌
私の真っ直ぐな眼差しで、お兄ちゃんを射抜く。
お兄ちゃんは渋い表情のまま、「仕方ないな」と呟いた。
「その代わり、いつかちゃんと理由を教えろよ?」
イービルとの闘いが終わって、平和を取り戻せたなら。
おとぎ話を語るように、話そう。
残酷で切ない、長い長い思い出を。
――六月一日、水曜日。
イービルに呼び出された、放課後。
やる気、覚悟、竹刀……。戦闘準備はOK。
私一人だけで来い、という指示なんだから、怜司くんに「ついていく」と言われる前に行かなくちゃ。
私は、怜司くんに怪しまれないように、教室を出た。
「琉美先輩!」
保健室前を入ろうとした私に、後ろから利一くんが声をかけた。
「こんにちは」
「こんにちは。利一くん、悪いんだけど、今日当番遅れるかも」
「え?」
私は保健室内に入ってカバンを置きながら、「ごめんね」と謝った。