オーロラの歌
どうして今、想起したんだろう。
弱気になってたのかな。
「大丈夫、大丈夫」
何度も、そう自己暗示した。
目を瞑って、深呼吸をする。
精神統一をして、周囲に敏感になるように感覚を研いだ。
これがイービルの罠だとしても、構わない。
私は、真正面からぶつかるために、ここにいるんだから。
瞼を上げると、水面に二つの影が映っていた。
私のと、もう一つ。
背後に、誰かいる……?
いつの間に、来ていたの?
気配なんて、一ミリも感じなかった。
汗がツー、と背筋を伝う。
恐怖心に怯えず、恐る恐る振り返った。
「……ど、して」
オリーブ色の短髪が、目に留まる。