オーロラの歌



どうして今、想起したんだろう。


弱気になってたのかな。



「大丈夫、大丈夫」



何度も、そう自己暗示した。


目を瞑って、深呼吸をする。


精神統一をして、周囲に敏感になるように感覚を研いだ。


これがイービルの罠だとしても、構わない。


私は、真正面からぶつかるために、ここにいるんだから。



瞼を上げると、水面に二つの影が映っていた。


私のと、もう一つ。


背後に、誰かいる……?


いつの間に、来ていたの?


気配なんて、一ミリも感じなかった。


汗がツー、と背筋を伝う。


恐怖心に怯えず、恐る恐る振り返った。



「……ど、して」



オリーブ色の短髪が、目に留まる。



< 744 / 888 >

この作品をシェア

pagetop