オーロラの歌
水温の冷たさが、身体の芯まで伝わってきた。
背を向けたせっちゃんが、遠ざかっていく。
待って、待って。
待ってよ!
手を伸ばしても、水中に棲む悪魔が私を下へ下へと引きずる。
泳げない私は、抗うこともできず。
緩やかにこみ上げる苦しみに、すがっていた。
息を止めていたが、さすがに永遠には無理で。
ひとつ、またひとつ、泡が上っていく。
揺らぐ水面には、もう影はなくて。
水を吸った制服が、鉛のようだ。
ひと粒の涙が、こぼれる。
なんでいつも、私はこうなんだろう。
立ち向かう勇気は在ったのに、焦ってうまく闘えなくて、あっけなく水の中に落とされてしまった。
強いとか弱いとか、そういう問題じゃない。
ダメだなぁ、私……。
朦朧としてきた意識で、伸ばしたままの手に、何かが触れたのを感じ取った。
透明な水に溺れそうな私に、窓から一筋の光が差し込んでいた。