オーロラの歌
僕はまだ、答えていないはずなのに。
江藤先輩は、戸惑う僕に白い紙を見せた。
そこには、『六月一日の放課後、プールで待つ。仲間に他言は無用。一人で来い。 イービルより』と綴られてあった。
予想が、運悪く当たってしまった。
やはり、琉美先輩が会いに行った相手は、イービルだったんだ。
「これが、お前の答えなんだろ?」
「え?」
「琉美ちゃんがお前に行き先を教えたってことは、お前が自分の正体を琉美ちゃんに打ち明けていないってことだ」
江藤先輩はきつい口調でそう言いながら、イービルからの手紙をくしゃくしゃに丸めて捨てた。
「ち、違います!!あ、えっと、違うっていうのは、打ち明けてはいないけど、答えではないって意味で……」
すぐに否定したが、江藤先輩の目は未だに僕を責めていた。
そりゃそうだろう。
琉美先輩を、一人で敵陣へ行かせたのだから。
「それならなぜ、お前はここにいるんだ?お前は、どうしたいんだ?」
ここにいるのは、保健委員だという前に、琉美先輩が心配で……。
その時、ハッ、と気づいてしまった。
僕は、中途半端で曖昧なところでうろちょろしていただけだということに。