オーロラの歌
「ようやく決まったようだな」
僕の表情が変わり、江藤先輩は満足げに笑った。
はい、決まりました。
僕自身の、進むべき道が。
軽い呼吸を繰り返して、集中力を限界まで高める。
プール一点を見据え、髪を耳にかける。
――ある日突然、僕の身体機能は激変した。
足に力を入れれば、人間離れした速さで走れて。
手に力を込めれば爪が伸び、毒を持つ爪の先は鋭く尖って。
肺を空気で膨らませば、凄まじい威力の雄叫びを発せられて。
そして、耳を澄ませば、遠い距離の音もはっきりと聞こえる。
まるで、狼のように――。
僕の人並み外れた聴覚は、どんな音も拾う。
生徒一人一人の話し声も、葉が擦れた音も、息遣いも。
それから、琉美先輩の叫び声も、水が勢いよく跳ねる音も、水が滴る音も。
琉美先輩が、水に落とされた……!?
今すぐに、行かなくちゃ。
僕は江藤先輩に何も告げずに、保健室の窓を開けて、プールへ一直線に走っていった。