オーロラの歌



プールまでの短い距離を猛スピードで駆けている間、脳裏には一ヶ月以上前のことが早送りで過ぎっていた。





『久賀、俺とちょっとお喋りでもしないか?』


『お喋り、ですか?』



イービルに襲われたあの日、ベットで休んでいた江藤先輩に話しかけられた。


唐突なお誘いに、平然となんてしていられない。



『俺さ、見ちゃったんだよ』



そんな前置きで始まった、江藤先輩とのお喋り。


見たって、もしかして魔法のこと?



『お前が殻に閉じ込められる前に、お前の手が鋭く伸びたところ』


『っ!?』


『爪を使って風を起こし、悪のエネルギーを吹き飛ばそうとでもしてたのか?』



見られていたことに、驚きを隠せない。


いや、それよりも、悪のエネルギーが見えるだけでなく、魔法や身体の変化を目の当たりにしても普通にしているこの人は一体……?


まさか、僕と同じで前世を思い出した人?



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