オーロラの歌
私は、視野を狭くしていた。
手紙の差出人=プールで会う人、と勝手に決め付けていた。
でも、手紙を出してきたのがイービルだとしても、プールに来る人がイービルとは限らない。
せっちゃんはカバンを開けて、カバンの中から何かを出そうとした。
俊敏に危機感を受信して、お兄ちゃんの見様見真似で竹刀を構える。
「せっちゃんが、」
せっちゃんは、取り出した細長いロープを自由自在に操って、私を攻撃しようとした。
すぐさま竹刀で弾いたロープは、持ち主の手に戻る。
「ゼロさんなの……?」
私の声が、踊り場に反響する。
せっちゃんは黙って、私を見つめた。
……やっぱり、そうなんだ。
「じゃあ、イービルは誰なの?」
私は平然とした態度を保ちながら、せっちゃんに問いかける。
鼓動が、うねるように鳴っていた。