オーロラの歌
――今、イービルの殺気を感じた気がした。
琉美も感じたらしく、江藤が魔法で階段を滑り台にすると。
「六沢は俺がなんとかする!魔法が消えないうちに、早く行け!」
「ありがとう、江藤先輩」
琉美が滑り台を颯爽と滑って、この場をあとにした。
俺と江藤だけになった踊り場で、俺は琉美を追おうとしたが、江藤が元に戻った階段の前に立ちはだかる。
「ここは通さない」
江藤が、床に刺さっていた剣を抜き取って、臨戦態勢を整えた。
さっきイービルにテレパシーをした時、イービルの現世を教えてはいけないのと、もう一つ言われたことがある。
それは、最優先に抹殺するべき対象である琉美がいなくなって、さらに江藤に逃げ道を阻まれた場合の、行動の指示だ。
……まったく、イービルは本当に怖い奴だ。
今まさにその状況になっている。
こうなるように、わざと琉美に殺気を向けたのか?
「校舎裏へ、テレポーテーション」
「あ、ちょ、待……っ!」
江藤の手は、俺にはあと数センチ届かなかった。
俺は指示通り、人気のない校舎裏に瞬間移動した。
先週の水曜日も今日も、俺は琉美を怖がせてしまった。
琉美に怯えられるのが、一番辛い。