オーロラの歌



隣から『ふふっ』と笑った声を耳で捉えて、振り向けば。


すぐ隣で、るんちゃんが俺の顔を覗き込んでいた。



『幻……?』


『本物だよ』


『なっ、なに勝手に入ってきてんだよ!!』



あぁ、ほら。


本物相手だと、素直になれない。



『ちゃんとノックしたよ?』


『返事してねぇよ!』


『“るんちゃん”って聞こえたから、入ったの』



るんちゃんは、上機嫌にニコニコしている。


その姿が眩しすぎて、目をそらした。



『私ね、ずっとせっちゃんって怖い人だと思ってた』


『……っ』



知ってるよ。


だって、俺、るんちゃんにひどいこと言って、怒らせてばっかだったし。



『でも、違った』




< 805 / 888 >

この作品をシェア

pagetop