オーロラの歌



すると、イービルの身柄を拘束していた利一くんに、イービルは目にも止まらないスピードで、エルボーを食らわせた。



「ぐはっ」


「利一くんっ」



利一くんは、お腹を抑えて倒れこむ。


私が利一くんを心配して駆け寄ろうとした直後。


イービルは、光の縄に捕らえられているせっちゃんの後ろ首を、手刀で激しく打った。


せっちゃんはそのまま気絶してしまった。


突然の出来事に、誰もが硬直していた。



「あたしね、こう見えても、自分の身は自分で守れるの。えらいでしょ?」


「なんで、あいつまで……」


「あいつ?ゼロのこと?」



怜司くんの問いかけに、イービルはニヤリと笑う。



「また催眠魔法をかけたら、またいやしの歌を聴かなきゃいけないでしょ?そんなの、もううんざりなの」


「……なんだよ、それ」


「それに、敵が増えたら面倒だしね」



歌を聴きたくないという自分勝手な私情で、今の今まで味方だった人をいとも簡単に傷つけて。


あれだけ『あたしのもの』と言い張っておきながら、不要になったら躊躇なく捨てる。


それが、イービルという名の極悪人。



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