オーロラの歌



いやしの歌で、国王になれるかなれないかが決まるってこと?


王族には、そんな伝統があったんだ。


初めて聞いた。


そういう伝統があったから、ウメおばあちゃんはオーロラを女王に推していたの?


いやしの歌の能力を持つ者が王の冠を手にできる、その理由はなんとなくわかる。



「……いやしの歌は幸せを贈ることができるから、なんじゃないのかな」



私の言葉に、イービルはピクリと眉尻を上げた。



「国王がいやしの歌で人々を光で包んであげられるから、国民に慕われて、国王も幸せになるんだよ」


「はあ?」


「嘘と恐怖で国を自分のものにしていたあなたには、わからない!!」



真実を晒さずに、国民を虐げていたイービルが統べる世界は、モノクロで錆び付いていて。


どこもかしこも、ひどく薄気味悪かった。



「それの何がいけないの?」


「何がって……全てだよ!」


「夢と愛を手に入れられる、王の座に即いていたあたしが、どうして好き勝手にやってはいけないのかしら?」



本気で、そう言っているの?


女王だから何をやっても許されるとでも思ってるの?



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