オーロラの歌
暗闇だった世界が、半分だけ真っ白になった。
ここにまで届いていた歌が、変えてくれたのかな。
目の前に、イービルの幻影が現れた。
あたしをここに閉じ込めた張本人が、自らここに来るなんて予想外だ。
「何の用?」
あたしがぶっきらぼうに言っても、イービルは何も返さなかった。
あれ?
イービルの雰囲気が、ちょっと変わった……?
防衛本能が、自然と薄れていった。
「……あたしと唯夏は、同類じゃないの?」
イービルはそう呟くと、視線を下げた。
「同じ、よね?」
あたしは、「自分はすごい」「自分が正しい」と思わなければ強くなれないと考えていた。
最初から自分自身を否定していたら、ネガティブ思考が定着しちゃって、後悔だらけの人生になっちゃうもん。
利一がいい例ね。
そういう考えを嫌う人も、尊敬する人もいる世の中で、あたしはあたしなりに真っ直ぐに生きてきた。
「同じだけど、同じじゃない」
「どういう意味?」
「考え方は同じだけど、根本的にも意味的にも違うってこと」
それに、あたしはイービルほどひねくれていないし、他人を道具のように思ったことはない。
けれど、似ていることに変わりはなくて。
その意識に、イービルの意識が交差して、最悪な状態になってしまった。