オーロラの歌
誰が、待っているんだろう。
聞き覚えのある声を思い出しながら、ラジの家の前から離れ、足を動かしていく。
ラジの家から、十軒離れた家。
その家の脇には、本当に道があった。
恐る恐る細い脇道を進んでいきながら、声の主が待つ場所へ近づいていった。
道を抜け、目の前に広がったのは、湖だった。
きらきらと輝く湖の表面に、導かれるように歩く。
湖の近くには、ひとつのベンチがポツンと設置されていた。
さびれたベンチに腰掛けて湖を見つめる、誰かの姿。
「待っていましたよ、オーロラさん」
振り返らずに言ったその人の声は、先程聞こえてきた、私をここへ道案内した声と同じものだった。
警戒しながら、ベンチのところへ向かう。
声の主が誰なのか、本当は気づいていた。
後ろ姿を見て、確信した。