オーロラの歌



夕日に照らされた、黒い髪。


やっぱり、あなただったんですね。




「――ゼロさん」




ベンチのすぐ後ろまで来た私が名前を呼ぶと、私を待っていたゼロさんは湖を見つめ続けたまま、自分の隣をぽんぽんと叩いた。


私は、ゼロさんとの間を空けて、ベンチに座った。



「どうして私を、ここに呼んだんですか?」



ゼロさんが、私に会いたかったってことでしょ?


その理由が、さっぱりわからない。


そりゃあ、私からしたら、会いに行こうとした人がわざわざ私を呼んでくれたのは、都合良かったけど。



「オーロラさんこそ、僕に用があったんじゃないんですか?」



なんでそのことを、知っているの?


私って、わかりやすい?顔に出てた?


図星を突かれて、目を泳がす。



< 86 / 888 >

この作品をシェア

pagetop